こども部屋は必要?

とてもポピュラーでありながら、
なかなかこたえのでない
「こども部屋」
についてかんがえてみます。

「頭の良い子が育つ家」
四十万 靖・渡邊 朗子 著(日経BP社)

というこのジャンルではとても有名な本があります。

この本で著者は、たくさんの難関中学に合格した家庭の事例から、
頭のよい子どもは子ども部屋では勉強しない。
という結論を導いています。(特に小学生では)

むしろ、ダイニングなどの家族が集まる場所、
母親が近くで家事をしている場所など、
家族とのコミュニケーションがとれるところで、
勉強しているケースが多い、と述べています。

これは壁、扉で閉鎖された、
「クローズスペース」では、かえって勉強に集中できず、
適度にざわつきがあったり、邪魔しない程度に周囲に人がいるような、
「オープンスペース」のほうが、
勉強に集中できるということだと思います。

つまり、子ども部屋という独立したスペースは、
かしこい子どもが育つという観点からすると、
必ずしも、必要なものではないといえると思います。

n+LDKのプランニング

マンションの間取りなどは、3LDKや4LDKといった、
いわゆる「n(個室の数)+LDK」であらわされる、
個室の数を重視したプランをしています。

住宅を売る側も購入する側も、
いくつ個室があるか、がとても重要なこととなっています。

せっかく家を新しくするのだから、
子どもにも個室を与えたいと思ってしまし、
ついつい、いくつ個室があるかに注目してしまいます。

ムダなスペースを作る「n+LDK」

建築計画的にみて、今の主流である「n+LDK」
というプランの方法をベースとした、
個室の数をできるだけ確保するとどうなるかを考えてみます。

・ムダなスペース
個室という壁と扉で区切られたスペースをつくりますので、
その部屋につながる「廊下」が必ずできてしまいます。
かぎられた住宅の床面積を有効に利用するためには、
廊下はとてももったいないスペースといえます。

また個室にはドアがつきますので、
ドアが開閉するスペースは、なにも使えません。
また、個室には収納(クロゼット)がありますので、
その扉を開閉するためのスペースも必要です。

・ムダなコスト
スペースだけでなく、部屋をくぎっていくと、
その部屋ごとに、照明やエアコンをそろえることになったり、
壁や扉などの建設費が余計に必要になります。

ムダなスペースをつくり、ムダなコストをかけてつくった
子ども部屋なのに、その子ども部屋では子どもは勉強しない、
となれば、なんのために個室を設ける必要があるのか。

「n+LDK」にかわるプランの方法はないのでしょうか。

オープンスペースによる子どもスペース

そのひとつの方法として、最初に述べました、
「オープンスペース」を子どもスペースとして計画しました。

我が家では、こども3人にたいして、
壁や扉を設けず、3階すべてを子どものスペースとしています。
3階プラン

3階は約13.5畳の広さがありますので、
1人4.5畳の広さをもっています。

これを3つの個室にわけてしまうと、
廊下、扉の分をひくと、有効に使えるスペースは約3.5畳となり、
ひどくもったいないことになります。

この子どもスペースは、吹抜けを通して、2階とつながり、
また、2吹抜けに面した三角窓から光がはいり、
天井の低さを感じさせない、拡がりのある空間としました。

また長さ7mあるカウンターを設けることで、
3人が並んですわっても、それほどの近さは感じられず、
適度な距離感を保っています。

3階写真

コミュニケーション

同じスペースに3人の子どもがいるわけですから、
誰かが勉強に集中していたら、下の階にいったり、
静かにしていたりと、お互いに気配りをして過ごしています。

また当初思っていたほど、子ども3人がずっと同じスペースに
いる時間は多くありません。
特に小学生の間は2階のダイニングにいることのほうが多く、
窮屈さは感じていないようです。

このスペースには扉もありませんので、
2階の話声もきこえますし、
ごはんができたら、2階のキッチンから呼べば聞こえます。

1階の玄関からも、階段を通じて音もきこえますので、
誰かが帰ってきたら、「おかえり」
家をでるときには、「いってきます」の声がかかります。

オープン子どもスペースのすすめ

子どもに個室を与えたい、子どもも個室がほしい、
というのは、なんとなくもう古くさい感覚だと思います。
「商品としての住宅」であるために、
できるだけ個室が多いほうがアピールしやすい、
といった売る側の論理にふりまわされているように感じます。

自分の家族、子どもに個室が本当に必要でしょうか?

それよりも、いつでも子どもと親が
コミュニケーションのできる雰囲気をもった、
オープンな子どもスペース
を実現してみてはいかがでしょうか。

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